マリ大統領と日本のNPO/NGOとの懇談会に出席させていただきました。
率直に言って、日本のNPO/NGO側の懇談会に対する認識不足を強く感じました。
(2003.10.4改稿)
大統領のスピーチ(抄訳)
私はすべてのマリ人の幸せを目標にしています。
マリは、美しく大きな可能性を持った国です。
日本に似ているところがたくさんあります。
古く、伝統文化を維持し、男女とも誇りを持っています。日本では大統領の私より、ミュージシャンのサリフ・ケイタ氏の方がはるかに有名なんですね。
今マリは音楽を始め、いろいろな文化的な事業に非常に力を注ぎ、文化を通してマリの発展を考えています。
文化大臣は、元映画監督のシソコ氏です。
今年はビエンナーレ2003や写真展が盛況に催されました。
国立博物館も増改築され11月11日に再開します。
デサート・フェスティバル、そのほか国際的ないろいろな文化行事が予定されて
います。
来年には国立音楽学院が開校されます。先日の小泉首相との会談では、農業の可能性についてお話しました。
マリの貧困の問題はまず食糧自給の問題でもあります。
マリには、豊かな土地と水と人(力)があります。
首相に、私たちは自分たち自身の手で豊かになる努力をすると約束しました。
マリは、安全保障よりも農業に予算も割くほど農業を重要なものと考えています。
日本には政府から、またマザーランドアカデミーや笹川アフリカ協会などのNGOからも援助米をいただきました。
感謝の意を表します。
笹川アフリカ協会にはまたハンセン病についても支援いただいています。
患者の社会においても農業関係の活動が主な復職先になっています。日本政府には、今回青年海外協力隊の派遣を要請しました。
文化や農業分野への彼らの貢献を期待します。
ひとつの家族として、青年海外協力隊やNGOのみなさんに、これからもマリへの協力をお願いいたします。
その後大統領への質疑の時間となった。
しかし日本のNPO/NGO側からは、自分たちの組織のポリシーや具体的な活動について、
「大統領、こういう私たちの活動をどう思われますか?」
と問う形の質問が多かった。
出席者は、それぞれ自団体の活動に誇りを持ち、精魂を傾けて活動しつつも、真摯な姿勢で活動しているからこそ余計に、自分たちの活動が本当に役に立っているかと自問自答している人たちばかりだろう。
だからこそ、大統領に自分たちの活動を説明し、その是非を問いたい気持ち、大統領からそれに対するコメントをいただきたい気持ちはよくわかる。
しかしそれは、大統領が多忙な中で、最終日にわざわざ日本のNGO/NPOのために割いてくださった貴重な時間のもっとも価値ある使い方だったのだろうか。
あのような「儀礼的」な場で、大統領から批判的な発言はありえない。
返ってくる言葉が初めから自明であるなら、その応答は自己満足以上の何を与えてくれるだろうか。
活動のポリシーや活動の影響については、活動の場で活動の主役である地域住民とこそ話しあうべきものだろう。
では、今回のような貴重な機会は、どの使うべきだったのだろうか。
儀礼的な場として考え、それ以上望むべきことではなかったのか。
例えば、参加するNPO/NGOが事前に話し合い、政策的なレベルで意見をまとめて、大統領にお話できたらどうだったろうか。
それは、大統領を通してマリ政府へ何らかの働きかけができる機会となったのではなかろうか。
そして事前の協議は、同じマリという地域で活動している団体が、それぞれの問題や活動について相互に理解し、問題を共有できる機会をつくるものであり、その準備だけでも意義があったのではないだろうか。
もうひとつ、大統領のお話を伺い、その反応を見ながら感じたことがある。
大統領の話された文化行事や農業の動向を私たちはどれほど知っていたろうか。
マリに活動の場を与えていただいている私たちは、もっと謙虚に、マリのこと、マリの人々の願いをも知る努力が必要だと反省した。
今回のそんな反省を、単に後悔とせず、具体的な行動に盛り込んでいきたい。
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