多くの植物に含まれるタンニン。
お茶に含まれているとか、薬用成分として、あるいは皮鞣(なめし)に使うものとして、その名前を耳にされたことはあるでしょう。
そんな、よく聞く成分のタンニンですが、これがそれを含む植物自身にとってどんな役をはたすのか、まだまだ明らかにされていないそうです。
そのタンニンについて、こんな記事がありました。
コナラやミズナラなどは種子であるどんぐりを野ネズミに運ばせ、まき散らしてもらっているが、食い尽くされては繁殖できない。有害成分は、「食い気」を抑え、どんぐりを食べ残してもらう樹木の生き残り戦略らしい。(中略)
15日後、人工飼料組はすべて生き残ったが、コナラ組は1匹、ミズナラ組は6匹が死んだ。
このような結果になったのは、どんぐりに高濃度で含まれるタンニンによって、野ネズミの消化機能がうまく働かなくなり、栄養を吸収しにくくなったため、と同チームはみている。
タンニン=水溶性ポリフェノール、という定義から、
1.水に溶ける
2.タンパク質と結びつく
3.結びついたものが沈殿する
などがタンニンの主な性質です。
これらの性質から、タンニンはそれを含む植物に
1.大地に落ちた葉や実のタンニンが土壌内の微生物,有機物と結びつき,樹木に適した環境をつくりあげる、つまり微生物と結びついてその侵入を抑える
2.動物に渋みを与えて食欲を抑え、成長が阻害されるのを防ぐ
などの働きをしていると言われてきました(平凡社世界大百科事典参照)。
今回の実験は、上記の2の仮説を裏付けるひとつのデータでしょう。
しかし、それなら、野ネズミがなんで死ぬまで食べるのか、ちょっと不思議ですね。
防衛本能とか、体調不良で死ぬ前に食べるのを止めそうな気がするんですが。
それから記事には、「タンニンによって、野ネズミの消化機能がうまく働かなくなり」と簡単に書かれていますが、それがどういうメカニズムによるものなのか、たんぱく質と結びついて沈殿するという性質とどう関わっているのか、もっと詳しく知りたいと思いました。
マリ北部では、アカシア・ニロティカ (Acacia nilotica) がタンニンを多く含んでいる樹木として有名です。
アカシア・ニロティカは豆科の植物なので、莢が生ります。莢は豆の形に大きくくびれた特徴的な形をしています。
まだ青い莢は30%、乾燥した莢でも15%、樹皮は20%以上のタンニンを含んでいるそうです( Hans-Jurgen von Maydell, Arbres et arbustes du sahel, GTZ, 1983 参照)。
サヘル北部では、皮鞣しは日常的に行われている作業です。
そのため、アカシア・ニロティカは、遊牧民に(農民や漁民にも)とても重宝がられている木です。
この木の枝葉は家畜のよい餌になり、莢は皮鞣しに自家消費するだけでなく、下痢止めなどの薬にも使われ、市場で売られる換金物でもあります。
木は乾燥に強いだけでなく、他のサヘルのアカシアより冠水にも強く、川沿いや季節的な沼などによく見られます。
幹は住居や船の資材などいろいろな用途で使われます。
で今考えてみると、水に強い、害虫が付きにくいなどのこの木の特徴は、まさにタンニンが多く含まれているためなのかも知れませんね。
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