今日名古屋大学で、沙漠学会の分科会がありました。
内容は以下の通りでした。
テーマ「アフリカ・サーヘル地帯の沙漠誌」(敬称略)
門村浩(東京都立大学名誉教授・自然地理学、環境変動論)
「サーヘルとチャド湖の変動‐過去・現在・未来」
コメント:サヘルに関する人文学的データなどの紹介とサヘルとチャド湖の歴史的変遷についての時間的にも空間的にも非常にマクロなお話でした。
長野宇規(総合地球環境学研究所・土壌水文学)
「ニジェール南西部のミレット栽培と農地保全」
コメント:首都に近い農村でのミレット栽培の研究による、土壌改良などに関する発表でした。収穫後、ミレットの茎を地面に倒しておくことによるクラスト(地表が堅くなり水分が浸透しなくなる)防止効果の説明は伝統農法の効果を裏付ける興味深いものでした。
石山俊(名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程・文化人類学、NGO「緑のサーヘル」研究員)
「チャド湖岸の村の暮らし」
コメント:チャド湖南東部の農村地域の概要報告でした。
そして最後に、
「サヘルの暮らしにおける『サヘル的認識』の再確認 − 遊牧民トゥアレグを中心にサヘル地域の暮らしや人々の特性を確認する −」
という長〜いタイトルで私も発表させていただきました。
私はこれまで、NGOやODAの業務を通して開発活動に参与、遊牧民の文化変容という視点からの文化人類学的な調査、そして妻を通した地元の家族づきあいを通して、20年近くいろいろな開発活動を見てきました。
そんな中で技術的な問題でなく、サヘル的な自然・社会環境についての認識不足から、多くの失敗が繰り返されているのを目の当たりにしてきました。
そこで「部外者」が見落としがちなサヘルの「常識」について再確認することの必要性を常々感じていました。
実際に現地で活動するNGOの具体的な活動に対して、そういう観点から積極的に意見を述べてもきました。
このブログでも、そういった内容の話を少しずつ「異文化」というカテゴリーで書いてきました。
今回、沙漠学会の分科会で発表する機会をいただいた時、遊牧民の文化変容についての研究成果の発表ではなく、日本の研究者の人たちに現地の人々の視点を話してみようと思いました。
しかし、その準備は楽しくもありましあがとても不安でもありました。
話の内容は、現地でしばらく暮らされた方たちには、当たり前のことばかりじゃないかといわれそうな気もしたからです。
よっぽど、人口動態の分析とか土地所有制度の変化に発表を切り替えようかとも思いましたが、自分の中でも「外部での非常識=サヘルの常識」ということについて一度整理しておきたいと思い、不安を押さえて発表をしました。
大きな(大きすぎる)テーマを
・自然環境に応じた生活・社会制度
・多層的かつノンリニアな時間認識
・イスラム的価値観(贈与・奉仕について)
・高文脈コミュニケーションの文化として
という4つの主題にわけて話をしました。
発表後、いろいろ質問やコメントをいただくことができなんとか胸をなでおろしました。
時間を見つけて、この4つの主題のひとつひとつについて、しっかりと分析したものを書きたいと思います。
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