宮崎県の県の木「フェニックス」(Phoenix canariensis)が、外来の害虫によって大きな被害を受けており、全滅の危険もあるそうです。
これによく似た木がサハラやサヘルにもあります。
ナツメヤシ(Phoenix dactylifera)です。
フェニックスもなつめやし属ですから、なつめやしの方が本家本元ですね。
ナツメヤシは、降雨量の多いマリ南部にはほとんどないですが、北部ではあちこちで見られます。
ナツメヤシは、中東原産の木で、サハラやサヘルでは野生の木ではなく、その苗は高い値で売買される栽培植物です。
モーリタニアでは、オアシスにたくさん植えられていて、その木陰で涼しげに小麦の穂が風に揺られていたのは、とても印象的でした。
けれどマリの北部では、実を食べた後に捨てられた種が芽を出して育ったように、人の手を借りずに大きくなっているようなものも時々見かけました。
妻と出会ったティン・アイシャ村の近く、水の来なくなったファギビーヌ湖岸にも数本並んでいた姿は、今でも瞼の裏に焼き付いています。
ナツメヤシは、実だけでなく、大きな葉、太い幹などすべてが役に立ち、古来より富の象徴ともされ、世界で最も古くから栽培されている植物のひとつです。
紀元前6,000年には、古代エジプトやメソポタミアで既に栽培されていたそうです。
また、ナツメヤシの学名に、不死鳥を意味するフェニックスという言葉が付けられていることからも、その有用性が高く評価されてきたことがわかります。
アラビア語では、キムリ(未熟な)、クァラール(カリカリした)、ルターブ(成熟してやわらかい)、タムル(天日で乾燥した)など実の熟れ具合によって10数種類の呼び名があるそうです。
日本の出世魚のようですね。
さて、そんなナツメヤシの仲間の宮崎のフェニックスが、今ヤシオオオサゾウムシという外来の害虫による大きな被害を受けています。
ヤシオオオサゾウムシは、本来日本には生息していない東南アジアなどの熱帯性の昆虫です。
日本では1975年に沖縄で発見され、2002年には、鹿児島県でやはりフェニックスを食害して話題になっていいます。
私の住む東海地方では、2003年10月に三重県の津で見つかっています。
熱帯性の昆虫ですが耐寒性もあり、関東以西の太平洋側では充分に生息可能とのことです。
今後、温暖化が進行すると、国内での増加・拡散も進み、さまざまなヤシ類への被害が増えるかも知れません。
対策の問題は、予防処置が非常に高価なことだそうです。
しかし、日本でサハラやサヘルを思い出させてくれるフェニックスが見られなくなるのはとても残念なので、なんとか費用対効果の高い対処法が進むことを祈っています。
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